- てづこ:
- 早速ですが、広瀬さんは子供の頃、どんなお子さんでしたか?
- 広瀬さん:
- 小学校低学年の時、リリアンていう編んだヒモが作れる物が流行ったんです。プラモデルも好きだったけど、リリアンも好きだったんですよ。 家庭科の授業でも先生がすごく褒めてくれるんです、「広瀬くん、ほんと上手いね!」て。 僕は人より、こうゆうことが得意なんだなぁ~って思ってました。
- てづこ:
- 手づくりに興味がわいたのは、そういった事からですか?
- 広瀬さん:
- 昭和30年生まれですからね、その時代は、ほとんど手づくりですよ。
裁縫ができた母が、私の着るものすべて、ワイシャツも手づくりでしたね。 - てづこ:
- ワイシャツもですか~。すごい!
- 広瀬さん:
- 祖母は昔、製糸工場で働いていたので、セーターをほどいたりするのが、上手いんですね。だから、近所の人に頼まれてほどいて、 それをまた糸の玉に戻す、みたいな事をしてました。いい意味で編み物ていうのは、リメイクであって、リサイクル!
- てづこ:
- ほんと!まさにそうですね~。
- 広瀬さん:
- 小さくなったからって、捨てる事はなくて、またそれを何とか編み直す。そうゆう時代の中で、私は育ったんですね。 手づくりに囲まれていたから、いつの間にか自分も興味を持ったのでしょうね。
- てづこ:
- 子供の頃から、みんなと同じものは嫌なんですね。
- 広瀬さん:
- 会社の履歴書には、母の作ってくれたピンクのジャケットを着た写真を添付したんです。
- てづこ:
- ピンクのジャケットですか~!
- 広瀬さん:
- そうですよ~。だって、ねずみ色じゃ、みんなと一緒で目立たないじゃないですか!
会社の総務では、その写真が話題になってたんですって。(笑) - てづこ:
- そりゃあ話題になりますね~。(笑)
- 広瀬さん:
- 高校生になって最初に作ったセーター、やっぱり失敗しました。本のとおりに編んでも、自分の手加減が違うから、小さいものが出来ちゃった。
- てづこ:
- 広瀬さんでも、そうなんですか?
- 広瀬さん:
- そうですよ!着るものをはじめて作った時は、まず1回目の挫折というか壁にぶち当たるんですよ。はじめは、本が間違ってると思うの。自分の手加減が違ってたことがわからないの。でも、その失敗が次の糧になるんですね。
- 広瀬さん:
- 高校の昼休みは、女の子達と編み物するんです。秋になると一斉に始まりましたね。近所のおばちゃん達に頼まれると、体型をちゃんと測って、型紙を作って編んであげるんです。そうすると、「あ〜光治は天才よ!」て喜ばれて、お小遣いももらえる。(笑)
- てづこ:
- 喜ばれてお小遣いももらえれば、腕前も上がっていきそう!(笑)
- 広瀬さん:
- 両親もね、編み物なんかやめろとは言わずに「今度、クラス会があるから編んで!」と言う親だったんでね。
- てづこ:
- そういう環境で育ったから、今の広瀬さんがいらっしゃるんですね〜。
- てづこ:
- 改めて、手づくりの魅力はなんだと思いますか?
- 広瀬さん:
- ちょうど仙台の方で、「編み物で復興支援」"というイベントがあって、私も被災地を何件か、回ったんですね、で、一番先にできるサークルって、編み物とか手づくりの物なんですって。特に東北の人は、編み物される方が多いんですよ。震災で喋りたくもない、外出もしたくない方々が、ポツポツと集まり出して、教えあったりしながら、手づくりの物を作るんですね。それと、助けて頂いた方々に何かをお返ししたい。その気持ちが重なって"手づくり"が広がっていったのだと思います。「生き甲斐になった。」て、仰ってくださる方が多いんです。
- 広瀬さん:
- そう思うと「ひと目ひと針」というのは、非常に時間はかかるけれども、何かそこには、魅力や魔力があるような気がします。「手でつくる事」は、人の心の尖った部分を、丸くするチカラがあるんだと思います。それは、実際に被災地を回って思ったことですね。
- てづこ:
- 9・11以降アメリカでも編み物が広がったそうですが、辛いきっかけかも知れませんが、また"手づくりの良さ"が見直されているのですね。
- てづこ:
- では、ご著書「美しい模様の棒針ニット」のおすすめポイントは、どんなところでしょうか?
- 広瀬さん:
- 今回は棒針らしい模様で、基本のメリヤス編みをベースにしつつ、そんなに難しくない模様を入れました。そして、キレイに仕上げるポイントなど、広瀬なりのノウハウをギュッと入れましたよ!