西田碧さん CRKさんインタビュー
西田碧さん CRKさんインタビュー
まず『オヤ』はトルコ語で・・・
てづこ:
今日は、三人にお集りいただきましたので、この『トルコの伝統手芸「オヤ」でつくるビーズを編み込む すてきアクセサリー』の本について、お聞きしたいと思います。では、今、とても人気の『オヤ』ですが、まだまだ知らない方もいらっしゃると思いますので、ざっくり言うと、どういったモノですか。
北谷さん:
まず『オヤ』とは、トルコ語で縁飾りの意味をさします。トルコの最も洗練された手工芸の一つで、オスマン帝国の時代から今日まで、女性たちにとても親しまれ、代々受け継がれてきたものなんです。
イスラム教では、女性は家族以外には肌や髪を見せないのが美徳とされていますから、頭髪を隠すためにスカーフを被ったんですね。で、そのスカーフの中には、
美しいレースやビーズの『オヤ(縁飾り)』が施されているものがあります。
モチーフには、いろいろな意味が込められたものもあり、目上の人などにものが直接言えない時代の、女性たちにとっての意思表示の手段でもあったそうです。
西田碧さんとC・R・K designの北谷千顕さんと今村クマさん

『オヤ』との出会いは・・・
てづこ:
長い歴史と共に作られた手工芸なんですねぇ。私は、この本で初めて『オヤ』という言葉を知ったのですが、
皆さんはどういうきっかけで、『オヤ』と出会ったのですか?
西田さん:
1996 年にアメリカで購入した雑誌に「オヤ」が載っていて、綺麗だなぁ・・・と印象に残っていたんです。
そうしたら、2003年に新宿の文化学園で日本トルコ民間交流協会の石本寛治さんが『トルコの伝統的刺繍とオヤ展』を
開催されるのを新聞で見つけまして。素晴らしい展示で本物の「オヤ」の美しさに衝撃を受け、
トルコからいらした3人の先生方の講義やイーネ(針)オヤとボンジュック(ビーズ)オヤのワークショップに参加しました。
北谷さん:
当時携わっていた「ビアンフェ」という手づくり雑誌の世界の手工芸を紹介する連載で、
石本さんのオヤコレクションを紹介しました。読者からの反響が大きかったことはよく覚えています。
西田さん:
2006年に石本さんから「トルコで日本文化を紹介する旅」に参加しないかとお声をかけていただき、
クマさんと一緒に参加しました。その時、ベイパザールの職業訓練学校で「イーネオヤ」の立体モチーフの編み方を
教わったのですが、市民祭のバザールで見つけた「ボンジュックオヤ」のスカーフに心を奪われてしまって・・・。
それらを日本に持ちかえったのが、今に繋がるキッカケですね。

「オヤ」を使ったスカーフ等
根気よくコツコツと解読する!
北谷さん:
そのトルコから買ってきたスカーフを、西田さんが根気よくコツコツと解読したんです。(笑)
西田さん:
自分でどうなってるかじーっと見て、編んだりほどいたりしながら研究しました。
会社の総務では、その写真が話題になってたんですって。(笑)
てづこ:
穏やかな印象の西田さんですが、そんな執念深さがあったとは!(笑)
チャイでも飲みつつ井戸端会議
てづこ:
『オヤ』の教本は、トルコにはないんですか?
西田さん:
オヤ展で1 冊購入しましたが、編み図はないし、トルコ語でしょ?
今村さん:
コンヤとイスタンブールで見つけた本にも作り方はなくて、オヤの写真が載っているだけでしたね。それでも解読の手助けにはなりました。
てづこ:
じゃあトルコの方たちは、どうしているんですか?
今村さん:
手先が器用で手づくり上手な女の子が良いお嫁さんの条件だから、小さいときからお母さんやおばあちゃんに教え込まれるんだそうです。
西田さん:
地方に行くと、まだ近所の方達とチャイを飲みつつ井戸端会議をしながら編んでいる光景が見られるんですよ。
てづこ:
なんだか目に浮かびますねぇ、その風景。
今村さん:
作ったオヤはサンドックという長持に詰めて、嫁入り道具(チェイズ)として持参するそうです。嫁ぎ先で披露するんですって。
西田さん:
でも今は、『オヤ』を作る人も少なくなっていて、お店やバザールで買う事もあるようです。

「オヤ」で無言のアピール?!
てづこ:
基本的な質問ですが、スカーフって、どうして被るんですか?
北谷さん:
はじめに少しお伝えしましたが、トルコはイスラム教の国なので、髪を隠すためにスカーフを被るんです。
西田さん:
都会では、若い人はスカーフを被らなくなってきていますが、でも礼拝の時は、みなさん被っています。
入り口にレンタル用のスカーフもあって、旅行者にも貸してくれます。被らないと注意されるんです。
てづこ:
『オヤ』には、様々な意味も込められているんですよね。
今村さん:
『オヤ』のモチーフには花や木、果物などの植物が多くあって、他にも、太陽や蝶、鳥、幾何学模様などもあります。
そのモチーフや色には意味や願いが込められていたりします。凄く面白いものもあるんですよ!
西田さん:
たとえば、嫁が「ごぼうの花」モチーフのスカーフを姑に被せれば、「いじめないで!」と意思表示していることになります。
てづこ:
コトバでは言わないけれど、「オヤ」で無言のアピールですねぇ、ほんと面白い。
北谷さん:
あと、嫁が「唐辛子」モチーフのスカーフを被るときは、彼女と夫の関係が唐辛子のようだという意味なので、
これを見た夫は早急に、嫁の苛立ちを鎮める努力をしなくちゃいけないんです。
てづこ:
日本にもあったらいいかも~!
北谷さん:
「アーモンド」モチーフのスカーフなら、好きな人に自分の愛の気持ちを告白するというしるしだそうです。

宝の部屋からぞくぞく~!
西田さん:
これは数年前に行ったオデミシのオヤバザールや、去年行ったイスタンブールで買ったスカーフです。
てづこ:
わぁ~細かくて、綺麗ですねぇ~!ひとつも同じデザインのものがないんですね。
ここがバザールみたい!(笑)
北谷さん:
トルコでは、ナイロンやポリエステルのオヤ糸で編んでいるんですが、昔は絹糸を使っていたそうです。だから、アンティークのオヤの多くは絹で編まれています。
てづこ:
カラフルでビーズも混ざってほんと綺麗!!宝の部屋からぞくぞく出てくる~!
手づくりの魅力は・・・
 
てづこ:
手づくりの魅力は、どんなことだと思いますか。
西田さん:
作っている時間がなにより楽しいですね、自分の好きなように作れて。
それを人にプレゼントした時に喜んでもらえることも魅力です。
今村さん:
作るのはもちろん楽しいんですが、私は作り方も担当しているので、
本のプロセスを見たりワークショップに参加してくれた方々が作れるようになって
喜ぶ姿を見るのもうれしいです。
絶対に、初心者でも作れる。
てづこ:
この著書『トルコの伝統手芸「オヤ」でつくる ビーズを編み込む すてきアクセサリー』は、どういったことを意識されましたか。
北谷さん:
「絶対に、初心者でも作れる!」というコンセプトでスタートしました。
すべての作品に作り方のプロセス写真をつけています。
今村さん:
パラパラマンガができるくらい撮影しました。(笑)
北谷さん:
使うビーズもガラスビーズの他にウッドビーズやパーツなど自在に組み合わせて、伝統手芸の「オヤ」を現代風にアレンジしました。
記号図をもとにお気に入りの色や素材で、
自分だけのアクセサリーも楽しんでいただけたら嬉しいです。
西田先生と『オヤ』作品

私が大切にしている 私の逸品 西田さん: 糸とかぎ針が入れられて、手首にかけながら編めるんですよ。